最近、家族に「テレビの音が大きい」と言われたり、大人数で喋っていると聞き取りにくくなっていることはありませんか?
補聴器は気になるけど、どこで買えばいいかわからない。新聞広告のものでもいいの?補聴器ってどんなものなの?と思っている方に補聴器について少しお話しをさせていただきたいと思います。
メガネと同様に補聴器も“生活の質”を上げるために必要なものだと私は考えています。近視の人がメガネをかけるように難聴の方にも補聴器を気兼ねなくできるお手伝いができれば嬉しいです。
なぜ年をとると聞こえが悪くなるのか
年齢を重ねると聞こえにくくなることは皆さんご存知のことかと思いますが、どのようにして聞こえなくなるのでしょうか?
耳は音(空気の振動)を鼓膜で集めてその奥で電気信号に変えて脳へと伝えます。
空気の振動を電気信号に変換するために、耳の奥にある有毛細胞という毛の生えた細胞がゆらゆら揺れる必要があります。しかし頭の毛が抜けるように、耳の有毛細胞も年とともにダメージを受けて弱くなり抜けてしまいます。
有毛細胞が正常に働かなくなるので電気信号に変換がうまくできず、難聴となります。
補聴器の今と昔
ちょうどよく聞こえる音の大きさというものがあります。しかし、難聴が進むと徐々にその範囲が少しずつ狭くなっていきます。
難聴は全ての音域が一律に聞こえにくくなるわけではなく、高い音が聞こえにくくなったり、低い音がより聞き取りにくくなったりします。
そんな中、新聞広告や家電量販店にあるような補聴器や集音器などは全ての音を一律に大きくするので音が割れて聞こえたり、うるさく感じてしまうことがあります。
昔の補聴器のイメージも「いろんな音が入ってきて逆にうるさい」と言ったイメージが多かったように思いますが、調整が難しくこのようなイメージが多くなってしまったのだと思います。
最近の補聴器は、小さなコンピューターが入ったデジタル補聴器と言って、その人の聞こえに合わせて、特定の周波数の音量を調整することでより聞こえやすいものにする、オーダーメイドな治療が可能となっています。
補聴器とうまく付き合っていくには
補聴器はリハビリの機器でもあります。補聴器を通した音は、機械を通した音であり、難聴となり休んでいた脳を動かすため、脳が不快に感じたいりします。補聴器から聞こえる新しい音を聞き取る必要性があるため練習(聴覚リハビリ)が必須となります。慣れていくためには、できるだけ長時間、補聴器を使用していただく必要があります。
例えば就寝とお風呂以外はずっとつけて脳に音を届けていきましょう。
補聴器が「ないよりまし」から「なくてはならいないもの」にするためには3つのことが必要です。
- 正確な聴力の評価を受ける
- 補聴器の調整の専門家(補聴器認定技能師)に補聴器を調整してもらう
- 補聴器をしっかり使用して補聴器の音で会話を聞き取る練習をすること
です。一緒に補聴器をなくてはならないものにしていければ幸いです。
補聴器の購入の流れ
視聴期間は補聴器屋さんや患者様の状態によって期間は変動します。
補聴器の調整には聴力検査が必須になります。
難聴の原因を評価して、改善できる難聴であるかどうかを確認します。
結果を持って、補聴器は認定補聴器専門店で補聴器の試聴を開始していただき、2週間から1ヶ月程度視聴していただいたのち、購入を検討いただくようになっています。
補聴器の購入費用について
補聴器の購入については実費となります。しかし購入費用は医療費控除の対象とすることができます。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する補聴器相談医を受診していただくと、補聴器適合に関する診療情報提供書が発行されます。その情報をもとに認定補聴器専門店で補聴器を購入した場合、税務署に医療費控除を申請することができます。高度・重症の難聴の方や18歳未満の軽度・中等度難聴児の方には公的な補聴器購入費用の助成制度を受けることができます。
詳しくは担当の医師にお尋ねください。
補聴器のQ&A
- 補聴器をつけたら健聴な人と同じように聞きとれるようになるの?
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健聴な人と同じ聴力には残念ですがなりません。難聴になると聞こえだけで会話の内容を聞き取る力も悪くなります。
補聴器はあくまでも今の聞き取りをより小さい音で同じ聞き取りができるようにする機器になります。そのため補聴器をつけている方と話す時は周囲の人も、正面からはっきりゆっくりと聞き取りやすい話し方を配慮することが必要です。
- 補聴器は両方使った方がいいの?
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聴力に左右差が大きく、片方がほとんど言葉を聞き取れていない場合は片方から始める場合があります。しかし、それ以外では可能であれば両方で使用していただくことをお勧めしています。
その理由は2つあります。
1つはメガネと同じで、片方で見るよりも両方の目で見た方が小さい文字も見えるように聞こえも両方で聞く方がより小さな音でも言葉が聞き取りやすくなります。
2つめは音の方向感覚が向上しますので、片耳より両耳の方が有利と言えます。
両方となると倍の値段になるわけですので、高価な補聴器を片耳だけでするより手の届く範囲で両方を選んでいただければと思います。
- 片方だけ難聴と言われたけど、片方が聞こえているから補聴器はなくてもいい?
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片方がしっかり聞こえているのであれば必ずしも必要とはなりませんが、やはり聞こえ方についてはご本人にしかわからない部分が多く、聞こえにくいなと感じているのであればまずは試聴してみるというのもありだと思います。両側が聞こえることで音の方向感覚なども向上しますのでやってみる価値はあると思います。
ただ、聞こえが極端に左右差ある場合はしないほうがいいこともあるので、それについては医師とよくご相談ください。
〜院長コラム〜 難聴が認知症のリスクに?
近年、肥満や喫煙などと同様に難聴も認知症のリスクの一つであると報告されるようになりました。年齢を重ねると聞こえが悪くなるとともに聞き取りの明瞭度も低下するようになります。なんとなく聞こえるけどはっきり聞こえていないので聞き流してしまったりすることが多くなりだんだん会話するのが億劫になったり、言葉が通じず相手にされなくなったりして会話が減っていくので脳の一部が使われなり休んでしまうようことで認知症の原因になると考えられています。厚生労働省や耳鼻咽喉科学会もこのことに対して重視しておりCMを出すなど注意喚起がなされるようになっています。
年を取ったのでもう遅いということはありません。聞こえにくいなと思ったその日から補聴器について考えてみてください。きちんと聞こえることでいつまでも若々しい脳でいたいものです。
〜院長コラム〜 AirPods Proは補聴器の代わりになるのか?
Apple社が販売しているワイヤレスイヤホンのAirPodsがあります。その上位モデルとして”AirPods Pro”というのがあり、この上位モデルが「補聴器の役割をしてくれるのでは」ということで、少し耳鼻科の中でも注目されています。そこで今回はAirPods Proの補聴器としての利点・欠点について説明したいと思います。
まず最初にお伝えしておきたいことがあります。AirPods Proは医療機器ではなくイヤホンであるという点です。
補聴器ではないことをご理解ください。
AirPods Proは、Appleのサイトから約4万円で購入ができます。補聴器は8万円から高級なモデルであれば何十万円とかかるのでかなり安価で購入できるという点で非常にメリットがあるものになります。
AirPods Proの良いところと欠点
良いところ
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音質が非常にいい
元々、音楽鑑賞のために作成されているものであるので音質に関しては、非常に優れています。補聴器を始めた時の聞こえ方の違和感は少ないかもしれません。
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安価であり、手軽に手に入りやすい
補聴器を購入すると最も安価なものでも8万円前後となりますので4万円は非常にお手頃価格と思います。
欠点
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音の調整を自分でする
補聴器についてですが、補聴器は難聴の方に対するリハビリでもあり、『聞こえを慣らしていく訓練』という側面があります。そのため定期的な調整が重要です。難聴だから音を大きくすればいいというわけでもなく、音を大きすぎると逆に不快に感じてしまうところがあるのです。難聴の方は心地よく聞こえる音の大きさの範囲が小さくなっていることがあります。そのため、AirPodsは自分で調整できていたとしても、実は必要以上に大きくしてしまったり、うるさいと感じ小さく調整してしまっていたりと、あってもなくても一緒となってしまう可能性があります。
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ノイズキャンセリング機能が優秀すぎる
ノイズキャンセリング機能で周りの音が全く聞こえなくなってしまって静かすぎて逆に不安になる方もいます。イヤホンのノイズキャンセリング機能をお使いになった方はご存知かもしれませんが、AirPods Proなどのノイズキャンセリング機能は電車の中でのガタンゴトンといった音ですらほとんど気にならないくらいまで静かになります。周囲音が過度に抑制されることで、環境音への注意が必要になる場面があります。
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ハウリング
ハウリングに対してはAirPods Proよりも補聴器の方が対応しやすいことがあるようです。専門の知識を持っていて慣れた補聴器認定技師さんが調整するのと、お一人で調整するのでは差が出てしまいます。
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アフターケアがない
補聴器認定技能士が関与しないため、イヤホンの調整やメンテナンスは各自で行う必要があります。
AirPods Proはどんな人が使うといいの?
適応と考えられているのは下記のような方です。
- 初めて補聴器を使用する人
- 言葉の聞き取りが保たれている(語音明瞭度が比較的良好な)軽度難聴の方
- 聴覚過敏の方
- 通常の補聴器・ヘッドホンが合わない方
しかし注意が必要であり、長時間の使用(4〜6時間以上)や高度の難聴の方は調整が難しくまた適切な音量管理が行われない場合、耳への負担が大きくなる可能性があります。
補聴器で調整を行われたものであれば耳への負担を減らすことができますが、ご自身で行う場合に専門的な知識が必要なため、現時点ではなかなか難しいのではないでしょうか。
以上のことから、補聴器の購入を検討されていたり、家族に補聴器を勧められている方はぜひ一度耳鼻科を受診していただき、ご自身の聴力や難聴の程度についてご相談いただければと思います。その上で、適切な補聴器をご選択いただくようにしましょう。
より良い聞こえは、日常の生活の質を向上させますので、そのお手伝いができれば幸いです。