従来のアレルギーに対するお薬は症状を抑えるための方法であり、根治治療ではありませんでした。しかし、舌下免疫療法は根治治療となりうる数少ない治療方法の一つです。現在はスギとダニに対してのみ行われています。
舌下免疫療法の効果
全ての人に効くわけではありませんが、70〜80%の人で効果があったと報告されています。今まで薬がないと生活に困っていた人でも舌下免疫療法を完遂すると薬を使用せずに済んだり、量を減らせる可能性があります。
効果が出るのには個人差があり早い方で2週間後、多くは数ヶ月と言われています。
治療について
アレルギー原因物質(アレルゲン)のエキスを含んだ錠剤を舌の裏に置き徐々に馴染ませていきます。初回は当院で行いますが、特にアレルギー反応などがでなければ、その後は自宅で毎日行っていただきます。これを3〜5年継続して、徐々に体に慣れさせていき体質を変化させていきます。
治療上の注意点
舌下免疫療法はアレルギー体質を変化させる治療で少しずつアレルゲンを取り込む必要性があります。そのため、初期や治療中にアレルギー反応が出たり、また極めて稀ではありますがアナフィラキシーと呼ばれる重篤な症状が出現することがあります。そのため、スギ花粉症に対する治療においては、スギ花粉の飛散時期を避ける必要性があります。当院ではスギ花粉が飛散する12月から5月中旬までは治療は行っておりません。
舌下免疫療法が行える方
- スギ花粉症、ダニアレルギーをお持ちの方
- 12歳以上で医師の指示のもと治療を行える方
- 定期的な受診が可能な方
舌下免疫療法が行えない方
- 喘息があり吸入などの治療を行っている方
- 治療開始時に妊娠中または妊娠の疑いがある方(治療中に妊娠された場合は継続可能です)
当院での治療開始の流れ
舌下免疫療法を希望される方はいつでもご相談ください。
血液検査でスギやダニアレルギーの有無を確認します。
※2年以内に検査をされた方は検査結果を持参してください。
※検査結果には数日かかる場合があります。
初回は当院で行い、アレルゲンの少ない錠剤から開始します。アナフィラキシーなどの重篤な症状が出ないことを確認するため投与後30分間院内で待機していただきます。問題なければ1週間自宅で継続していただきます。
1週間後お話を伺い、問題なければアレルゲンの多い錠剤に変更します。
変更後も1週間後に受診していただき、問題なければ1ヶ月ごとの受診となります。
3〜5年継続後に患者さんと相談のうえ投薬を終了します。
花粉症の注射療法:ゾレアとは?
注射療法:ゾレア(抗IgE免疫ヒトモノクローナル抗体皮下注)とは、既存の治療である抗アレルギー薬の内服や鼻のスプレーをしても効果不十分な重症・最重症と判断される方に対してのみ行える治療法です。非常に高価な薬品になります。ご希望の方はご相談ください。
ゾレアの効果について
IgEという抗体(アレルゲンに対する、人が持つ武器みたいなもの)があります。肥満細胞がIgEとくっつくことでアレルゲンを攻撃します。アレルゲンを捕食した肥満細胞はヒスタミンという化学物質を放出します。このヒスタミンがアレルギー反応の元になります。ヒスタミンが多くなると鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、目の痒み、涙などの症状の症状が出現します。
従来の治療はこのヒスタミンが反応するための受信機や反応後の化学物質に対してその先の化学反応が起きないようにしていました。
しかし、ゾレアはIgE抗体そのものに対して反応するため、肥満細胞とIgEが反応しなくなり、ヒスタミンが放出されず、アレルギー反応:鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、目の痒み、涙などの症状が抑えられます。
非常に薬代が高いこと、使用できる人に制限があること、注射なので痛いというデメリットがありますが、重症な方の症状を抑えられるというメリットがあり、蕁麻疹や喘息で先に使用されていたため、安全性などは確されたものになります。
注意点としては、寄生虫に対してもIgEが活躍するため(日本では少ないですが)寄生虫感染のリスクがある地域への滞在は注意が必要です。
舌下免疫療法のQ&A
- 効果はどれくらいありますか?誰にでも効果がありますか?
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現状で対象となる方は、スギ花粉症とダニアレルギーのある方です。
体質を改善させる治療であり個人差があるため全員に効果があるというわけではありませんが、約8割の方には効果を実感していただけます。
- どのような方におすすめですか?
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スギ花粉症やダニアレルギーの方におすすめです。
特に以下のような方におすすめしています。
- アレルギーのお薬をたくさん飲んでいて、少しでも症状を良くしたい、お薬を減らしたい方
- アレルギーの薬での眠気など副作用のある方
- 花粉症で毎年悩んでいて心配な方
- 将来妊娠した際に薬が使えないことに不安のある方
- 受験シーズンにスギ花粉症と重なるため少しでも良くしたい方
- 治療を受けられない人はいますか?
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まず大事なこととしては、スギ花粉症やダニアレルギーがあることを証明する必要があります。これは血液検査などで診断します。(当院では2年以内の検査であれば他院で行ったものでも治療を開始することができます。)
検査でアレルギーが証明された人でも以下の方には治療を行っておりません。
- 妊娠されている方や近い将来妊娠を希望している方
- 重症喘息の方
- 心臓病のある方
- 癌治療中の方
- 免疫不全症や免疫抑制薬を使用いている方
- βブロッカーという薬を内服している方
- 5歳以下の方
- 何歳から始めることができますか?
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従来は12歳以上の方に適応となっておりましたが、2018年からは5歳以上の方を対象としています。治療をうまく遂行できることや副作用などから、当院では就学児(6歳以上)に対して行なっております。
<院長からの一言>
アレルギーの素因をもつ小さいお子様にとっては、年齢を重ねるにつれて発症するアレルギーの原因や症状が変化しながら、複数のアレルギー疾患を発症する可能性がある(アレルギーマーチ)と言われております。舌下免疫療法は、体質を改善させることで新たなアレルギー疾患発症を抑制する可能性があります。また、新たなアレルゲン感作することを抑制しうる可能性があるので、小さなお子さんに対する舌下免疫療法は意義のある治療だと考えています。
- どれくらいで効果が現れますか?
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早い方では数ヶ月で効果を実感いただけることがあります。基本的には徐々に体質を変化させる治療であるため1年以上かけて、効果が高まっていくと考えています。根気強く治療することが大切です。
舌下免疫療法を始めてもスギ花粉対策や、掃除などのダニを減らすことを心がけることも重要です。
- どのくらい続けたらいいですか?
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効果が出たからといって、完全に体質が改善したわけではありません。この治療は3〜5年間の治療になります。長く続けていただくことで効果もそれだけ長く続くとも報告されていますので、3〜5年の継続をおすすめします。
- 副作用(副反応)はありますか?
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少量ではありますが、アレルギーの原因物質を体内に取り込むため、アレルギー反応が起こる可能性があります。稀ですが、皮疹、喘息発作、呼吸困難感、頭痛、全身のかゆみ、下痢、倦怠感などが見られます。多くは症状の軽いものであり、よく理解していただければ安全に行えます。
- 30分経っても副作用(副反応)の症状がでなければ、大丈夫ですか?
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副作用が出るのは投与後30分以内が多いですが、その後に出ることもあります。何か気になることがあればいつでもご連絡ください。
- 舌の裏が腫れている時は、どうしたらいいですか?
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舌の裏のみの腫れであれば様子を見ていただいて構いまいません。そのほかの部分が腫れていないかなど確認して、腫れている場合、可能であれば写真を撮っていただき次回お見せください。30分くらいで改善することが多いですが、なかなか引かない場合はお渡している、アレルギー薬を内服してください。
次回受診まで日にちがある場合は、アレルギー薬を舌下免疫療法の30分前に内服してから舌下投与を続けてください。
腫れとともに強い喘息症状やじんま疹、息苦しさがあればすぐに当院を含めた医療機関へ受診してください。
- 口の中が痒くなった、ピリピリする違和感がある時はどうしたらいいですか?
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よくある症状の一つです。特に腫れなどがなければ数日間舌下投与するとなくなってきます。次回受診時に教えてください。
- 喘息が出た場合、治療は続けられますか?
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喘息が出現した場合には、治療を中断してください。喘息が改善されてからの治療再開となります。もしも喘息が頻回に起こる場合は治療を断念する場合があります。
- じんま疹が出た時の対処方法はありますか?
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舌下免疫療法後にじんま疹が出た場合には、お渡しているアレルギー薬を内服してください。それ以降の投与は中止して当院にご相談ください。
場合によっては皮膚科に受診していただくことがあります。
- 通院について教えてください
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舌下免疫療法は少量から始めて量を増やしていきます。
最初の1週間は低容量で行い、2週目から維持量へと増量します。増量後問題なく行えていたら1ヶ月ごとの受診になります。
<診察の流れ>
- 初回受診:アレルギーの確認、治療の説明。
- 投与開始日:初回投与は当院で行う(薬は近隣の薬局までと取りに行っていただくようお願いしています)
※投与後は院内で30分待機し、アレルギー症状でないか確認を行う
- 投与8日目:再度受診、診察し問題なければ増量
- 投与15日目:増量問題なければ治療継続
その後1ヶ月ごとの受診になります。
- 費用はどのくらいかかりますか?
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初回は5000円程度の検査費となります。
治療については症状による内服薬の処方などで前後しますが、1ヶ月あたり2500円から3000円程度となります。(保険適応範囲内)
- 1分間しない間に飲み込んでしまった場合、どうしたらいいですか?
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口の粘膜から吸収されることが望ましいため、口内での保持が重要ですが早めに飲み込んでしまった場合でもやり直す必要はありません。翌日からまた続けてください。
- 飲み忘れてしまった場合、どうしたらいいですか?
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飲み忘れがあった場合は翌日に量を増やしたりせずに、1日1回の決められた量で再開してください。
また長い期間飲み忘れがあると中止する場合がありますので、規則正しく飲むようにしてください。1週間程度であれば同じ量で再開しても構いませんが、再開する場合は当院で相談してからの再開でお願いします。
- 体調が悪い時も続けて大丈夫ですか?
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体調が悪い時や他院でインフルエンザやコロナを指摘された際は、当院までご連絡ください。場合によって受診していただくこともあります。38度の発熱があるなど、受診が難しい場合は休薬し、体調が改善された際に受診いただき再開を指示いたします。インフルエンザなどの場合は療養期間までは休薬されることをおすすめします。短期間の休薬は治療に影響しません。
- 修学旅行や旅行中も続けたほうがいいですか?
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休薬していただく場合もあります。長期の旅行などを計画されている際は事前にご相談ください。
- 歯の治療をすることになりましたが、続けていいですか?
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歯を削るなどであれば問題ありませんが、歯科治療後は翌日まで舌下免疫療法は行わないでください。歯科治療の2時間前までは可能ですので早めに投与してから歯科治療を受けることをおすすめします。
しかし、抜歯や切開など、唾液に血が混じるような歯科治療であれば傷が治るまでは中止してください。1週間は舌下免疫療法を中止します。傷の治り具合について歯科の先生にご相談されるか、当院までご相談ください。
口をケガした時も同様です。傷が治るまで中止してください。口内炎がある場合もです。
- 治療中にアレルギーの症状が出た場合はどうしたらいいですか?
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その場合はアレルギー薬を併用します。注意点としてはステロイドの内服薬は避けるようにしてください。ステロイドは免疫に作用する薬であるため、併用することで舌下免疫療法の効果が減弱する可能性があります。
- 喘息やアトピー性皮膚炎があっても治療できますか?
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はい、可能です。重症な喘息治療中の方はできませんが、喘息やアトピー性皮膚炎の治療を継続していただくことで舌下免疫療法を行うことは可能です。その場合は、かかりつけの内科や皮膚科の先生、小児科の先生と連携して行いますので事前にご相談ください。
- 治療中に予防接種を受けてもいいですか?
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大丈夫です。予防接種を受けてください。万が一副反応が出た場合にはどちらが原因かわからなくなる場合がありますので、予防接種と舌下免疫療法は数時間以上空けて行うのが良いでしょう。
- 治療中に妊娠した場合、治療は続けられますか?
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妊娠しても治療は可能です。妊娠が判明したら治療を一旦中止して早めに来院してください。その後の注意点について説明いたします。
- 食物アレルギーが出たらどうしたらいいですか?
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食物でアレルギーが出た場合にはその日の投与は中止してください。
翌日症状が改善していたら再開可能です。症状が続いている場合は投与しないでください。頻回に起こるようであれば、ご相談ください。